特車申請の個別審査について 原因・対応方法を解説
特殊車両通行許可申請、いわゆる特車申請において個別審査(個別協議ともいいます)は避けて通れない障壁です。
個別審査の理解、そして個別審査が発生した際の対応を知っておかないと、申請が長期化、あるいは許容できない通行条件がついてしまう可能性が・・・
本記事ではそんな個別審査について深掘りして解説していきます。
個別審査とは?
申請車両が該当道路を通っていいか(物理的に通行可能かなど)、個別に審査することを個別審査といいます。
通常は道路情報便覧のデータを参考に、申請車両が通行可能かどうかをシステム上で自動で算定できるのですが、申請内容にシステムで算定不可の要素が含まれている場合、個別審査となってしまいます。
道路には道路管理者がいるので、その道路管理者と個別に協議を行い、その結果通行可能かどうかの結論が出ます。
場合によっては、不許可、あるいは許可が出たものの、通行条件が付きの許可になったりします。
個別審査(個別協議)になってしまう4つの原因
個別審査に突入する理由は、大きく分けて「道路の問題」と「車両の問題」の2つがあります。実務上、よくある原因は以下の4つです。
① 経路に「未収録道路」が含まれている
特車申請のシステムは万能ではありません。
国道や主要な県道などはバッチリ収録されていますが、県道及び市町村道は、データが載っていない(未収録)ことが多いのです。
※道路情報便覧に収録されているのが収録道路で、未収録なのが未収録道路です。

データがない道を通るとなれば、システムも「俺、この道知らないから判断できないわ!」とお手上げ状態になります。
結果、その道を管理している道路管理者と、文字通り「個別に協議」することになります。
② 超重量車両・超寸法車両(お化けスペックの車両)
車両の総重量が一般的な制限を遥かに超えている場合(例えば40トン、50トンを超えるような超重量車)や、新幹線の車両や風力発電のブレードを運ぶような超寸法車両の場合です。
これらの車両は、システム上の「安全基準」の枠を完全に突き抜けているため、「本当にこの巨体が通っても道路や橋が壊れないか?」を、個別に審査しなければいけません。
③ 道路幅員(みちのはば)が狭い区間がある
いくら車検証上は問題なくても、通るルートに「すれ違いが不可能なほど狭い道」や「直角に近いクランク・急カーブ」がある場合です。
「これ、本当に曲がりきれるの? 対向車線にはみ出して大事故にならない?」という懸念がある場所は、自動算定の網に引っかかり、個別審査へと回されます。
④ 老朽橋梁(ボロい、もとい歴史ある橋)
ルート上に、建設から何十年も経過して強度が落ちている橋(老朽橋梁)がある場合です。 道路管理者としては「普通のトラックならいいけど、この重い特車が通ったら橋の寿命が縮む、最悪落ちる!」と戦々恐々。そのため、橋の構造計算などを引き合いに出した慎重な審査が行われます。
個別審査の最大の恐怖は「時間が溶ける」こと
個別審査の本当の恐ろしさは、不許可になるリスクだけでなく、許可が出るまでに凄まじい時間がかかるという点にあります。
通常の自動算定(便覧審査)であれば、早ければ数日、遅くとも数週間で許可が下ります(概ね21日以内には許可がおります)。
しかし、個別審査に突入した瞬間、時計の針は一気に遅くなります。1ヶ月待ちは当たり前、お相手が忙しい道路管理者だったりすると2ヶ月、3ヶ月と時間が溶けていきます。
個別審査する箇所が多ければ、それだけ審査に時間がかかるのです、
行政書士という立場上、色々な許認可を扱うのですが、その観点から申し上げると、特車申請の許認可のスピードはかなり遅い。
とくに道路の多くは未収録道路なので、未収録道路を避けて経路作成をするのは難しく、未収録道路の箇所が多ければ、それだけ審査にも時間がかかってしまいます。
国土交通省は収録道路を増やしており、おかげで国道は100%収録されていますが、市町村道はまだ半分も収録が済んでおらず、今後に期待したいところですね・・・
個別審査を突破する!原因別の具体的な対応方法
「じゃあ、個別審査になったら指をくわえて待つしかないの?」というと、そんなことはありません。事前に対策を講じることで、審査をスムーズに進めたり、期間を短縮したりすることが可能です。
【超重量・超寸法の場合】「軌跡図」と「運行計画書」で安全を証明する
規格外の巨体を運ぶ場合は、道路管理者に対して「絶対に安全に走り抜けますから!」という客観的な証拠を提出します。
- 軌跡図(きせきず): 車両が交差点やカーブを曲がるときに、タイヤや車体がどういう軌跡を描くかを図解したものです。「ほら、計算上、この交差点は縁石に乗り上げずに曲がりきれますよ」という証明になります。
- 運行計画書: 「交通量の少ない深夜の○時に通行します」「狭い場所では前後に誘導車を配置して対向車を止めます」といった、具体的な安全対策をまとめた書類です。これらをセットで出すことで、お上の安心感を勝ち取ります。
- また、それに加えて理由書も必要となります。
(理由書=超重量・超寸法車両で運行しなければいけない理由を疎明する書類)
【未収録道路の場合】「付近図」の添付と事前の「幅員証明」
システムに載っていない道を通るなら、まずはその道の正確な情報をこちらから提供しなければなりません。
- 付近図(見取り図)の添付: Googleマップなどの分かりやすい地図をベースに、通行ルートを赤線等で明記した詳細な付近図を添付します。
付近図には、未収録道路の交差点番号と路線名を明記します。 - 幅員(道路の幅)の事前確認: 実務的な裏技として、事前に現地の自治体(市役所など)から「道路幅員証明書」を取得しておいたり、担当部署に「今度ここを特車で通りたいんだけど、幅足りますかね?」と事前相談(根回し)をしておくと、申請後の個別協議が爆速で終わることがあります。
通行条件について
個別審査を経た後、無事に許可こそおりたものの、通行条件が付くことがあります。
通行条件とは、文字通り、その道路を通る際に、必要な条件を満たさないと通行しちゃだめだよというルールです。
以下が通行条件です。

A・B条件だと運行に大きな支障はありませんが、C条件から一気に運行が厳しくなります。
運行車両とは別に誘導車が必要になり、かつD条件となれば、指定された区間、他の車両を排除しなければいけないという、なんとも七面倒な条件が付されるのです。
また夜間通行(21:00~6:00)の条件が付される場合があります。

ちなみに誘導車の運転にも一定のルールがあります。
まず誘導車を運転するには、国土交通省が定める講習を受講している必要があります。
加えて、誘導車は誘導車とわかるように、「特殊車両誘導中」というステッカーや標識を車両に装着し、第三者から一目で認識できるようにします。
詳しくは当事務所の下記記事を参照してください。

まとめ:個別審査の沼にハマる前にご相談を
個別審査は、特車申請における「終わりのない追試」のようなものです。 お相手(道路管理者)ごとに求める書類も違えば、審査のスピードも違います。
- 未収録道路には「付近図」
- 超重量・超寸法には「軌跡図」と「運行計画書」
- そして何より「個別審査を避けるルート選定」
「このルート、個別審査になりそうだな……」「一刻も早く許可が欲しい!」と思ったら、時間を無駄にする前に、ぜひ当事務所にご相談ください。
