【特車】最大積載量を積むより減トンを
「最大積載量まで積めるんだから、積まないともったいない!」 運送会社の配車担当さんや社長さんなら、そう思うのが普通。
積載効率を上げることは利益に直結しますし、1回で運べる量を増やすのは物流の正義です。
しかし、特車申請(特殊車両通行許可)の世界では、その「正義」が通用しないどころか、自分たちの首を絞める結果になることがあります。
今回は、「車検証の最大積載量を信じてはいけない」という、ちょっと意外で、でも極めて現実的なお話を、行政書士の視点から解説します。
1. 車検証の「最大積載量」と特車の「通行制限」は別物
ここが最大の落とし穴です。この2つは切り離して考える必要があります。
- 車検証の最大積載量: その「車両」が物理的・法的に耐えられる重さ。
- 特車の制限: その「道路(橋)」が耐えられる重さ。
いくらトラックが「30トン積めます!」と胸を張っても、通るルートにある橋が「いや、俺5トンまでしか無理だから」と言えば、そこは通れません。 特車申請においては、主役は「トラック」ではなく「道路」なのです。
2. なぜ「満載」にすると許可が下りないのか?
特車申請では、通行するルート上の橋梁(橋)の強度を一点一点チェックしていきます。 ここで問題になるのが、橋の「寿命」と「強度」です。
最近の橋は頑丈ですが、古い橋や細い道にある橋は、重い車が通るたびに悲鳴を上げています。意気揚々と車検証上の最大積載量ギリギリで申請を出すと、以下のような「地獄の展開」が待っています。
① 許可そのものが「不許可」になる
「この重さでは、どう頑張ってもこの橋は壊れます」という判断が下されると、許可は出ません。 「たはー、別の道を探します」と言えればいいですが、その道が唯一のルートだった場合、仕事そのものが成立しなくなります。
② 厳しい「通行条件」がつく(D条件など)
「どうしても通りたいなら、以下の条件を守れ」という宿題が出されます。これがまたキツい。
- 夜間通行(21:00〜6:00など): ドライバーさんの拘束時間や深夜手当に直結します。
- 徐行・連行禁止: 前後に車がいない状態を確認して、ゆっくり渡れという指示。
- 誘導車の配置: 前後にエスコート車をつけなければなりません。コストが跳ね上がります。
「最大積載量まで積んで利益を増やそう」と思ったのに、誘導車の手配や深夜労働で、増えた利益がすべて吹っ飛ぶ(むしろ赤字)という、笑えない状況に陥るのです。
3. 「戦略的減トン」のススメ
では、賢い運送会社さんはどうしているのか? 答えは、あえて「最大積載量まで積まない(減トンする)」という選択です。
「えっ、もったいない!」と思うかもしれませんが、あえて積載量を数トン落とすことで、以下のようなメリットが得られます。
- 通行ルートが劇的に増える: 通れる橋が増えるため、最短ルートで許可が下りやすくなります。
- 通行条件が緩和される: 「夜間限定」だったのが「昼間もOK」になれば、配車の自由度は一気に上がります。
これは、難易度の高い計算問題をあえて捨てて、確実に取れる問題で合格点を目指すというのは、資格試験のようなものです。「全部取ろうとすると、全部失う」。特車申請もまさにこれ。
もちろん、減トンすると、運行回数を増やしたり、車両を増やさなければいけなかったり、デメリットもあります。最終的には総合的に判断する必要がありますが、特車申請においては原則最大積載量で積むのはおすすめできません。
4. 許可が下りない時の「Bプラン」
もし、どうしても最大積載量付近で運びたい、でも許可が下りない……という場合は、以下の2つの方法を検討します。
① 経路変更(ルートの再選定)
「この橋がダメなら、遠回りでもいいから頑丈な国道を通る」という選択です。 距離は伸びますが、誘導車なしで昼間に走れるなら、トータルコストは安くなるかもしれません。
② 車両の変更(軸数を増やす)
同じ重さの荷物を積むにしても、タイヤの数(軸数)が多い車両を使えば、1点にかかる重さ(軸重)が分散されます。 道路へのダメージは「軸重の4乗」に比例するので、軸を増やすことは、道路にとっての「優しさ」になります。優しくすれば、道路管理者も「通っていいよ」と言ってくれやすくなります。
まとめ:効率の正解は「現場」にある
「最大積載量まで積むのが一番儲かる」というのは、あくまで計算上の話。 特車申請という現実のルールを前にした時、あえて積載量を抑えることが、結果的に一番の利益(と安全)を生むことが多々あります。
- 車検証より「ルート」を見る
- 満載より「スムーズな許可」を目指す
- 誘導車をつけるくらいなら「減トン」を検討する
「この荷物、このルートで満載で行けるかな?」と悩んだら、ぜひ一度ご相談ください。 貴社の利益を最大化するための「落とし所」を、特車申請のプロとして一緒に考えさせていただきます!
「ギリギリの積載量」でお悩みの方へ。安全で効率的なルート選定をサポートします。
