【特車】隣接軸重とは?軸重との違いも解説
特殊車両通行許可申請の実務をしている方は、必ず「隣接軸重」という言葉を見聞きすることになります。
隣接軸重とは何か。軸重との違いは?隣接軸重が特殊車両通行許可申請にどのように影響を与えるのか。
本記事ではそういった疑問にお応えしていきます。
1. 「軸重」と「隣接軸重」の決定的な違い
まず、基本となる「軸重(じくじゅう)」のおさらいからいきましょう。 軸重とは、「車軸1本(左右のタイヤ1対)にかかる重さ」のことです。日本の道路法における一般的制限値では、原則として「10トン」と決められています。
では、今回の主役である「隣接軸重(りんせつじくじゅう)」とは何か。 一言で言えば、「隣り合う車軸の重さを合計したもの」。
トラックの後ろ側を思い浮かべてみてください。大きな荷物を運ぶトレーラーや大型トラックは、重さに耐えるために後ろのタイヤが「2連続」「3連続」で並んでいますよね。あの、お隣さん同士の車軸の重さを足算したものが「隣接軸重」です(上記写真参照)。
「軸重がそれぞれ10トン以下なら、何本並んでいてもセーフでしょ?」と思ったら大間違い。 道路(特に橋)からすれば、「10トンの塊が1個通り過ぎる」のと、「10トンの塊が2個、ものすごい至近距離で同時に乗っかってくる」のとでは、受けるダメージが全く違います。
一歩間違えれば、橋に致命的なダメージを与えてしまう。だからこそ、普通の軸重とは別に、この「隣接軸重」という厳しい関所が設けられているのです。
(根拠法令は道路法第47条1項、車両制限令第3条)
2. 【超重要】隣接軸重の3つの制限値
隣接軸重のややこしいところは、「隣り合う車軸と車軸の距離(軸距:じっきょ)」によって、制限値が3段階に変化するという点です。
国が定めた基準は、以下の3つのパターンに分けられます。
パターン①:軸の距離が1.8m未満の場合
- 制限値:18.0トン
車軸の間隔が1.8mより狭い、つまり「かなり密着してタイヤが並んでいる」状態です。この場合、2本の軸の合計重さは18.0トンまでに制限されます。「1軸10トンだから2本で20トンまでOK!」とはならないのが、特車申請の憎いところですね。
パターン②:軸の距離が1.3m以上あり、かつ単体の軸重がどちらも9.5t以下の場合
- 制限値:19.0トン
少し間隔が広がり(1.3m以上)、さらに「それぞれの車軸にかかる重さが9.5トン以下」というお行儀の良い状態であれば、特別に合計19.0トンまで認められます。
パターン③:軸の距離が1.8m以上の場合
- 制限値:20.0トン
車軸の間隔が1.8m以上離れている場合です。これだけ離れていれば、道路側も「よし、それぞれ別の重りとしてカウントしてやろう」と認めてくれるため、10トン+10トンで合計20.0トンまでOKになります。
分かりやすく表にまとめると、以下のようになります。
| 隣り合う車軸の距離(軸距) | 個別の軸重の条件 | 隣接軸重の上限値 |
|---|---|---|
| 1.8m 未満 | 特になし | 18.0トン |
| 1.3m 以上 | いずれの軸重も 9.5トン以下 | 19.0トン |
| 1.8m 以上 | 特になし | 20.0トン |
要するに、「タイヤ同士が近くに集まるなら、その分トータルの重さを軽くしなさいよ」というルールです。
建物一箇所に鉄アレイなどの重量があるものを集中的に置いたら、その箇所にだけ重量が集中して床にダメージが蓄積してしまい、最悪床が抜けてしまうかも。隣接軸重はそんな事態を防ぐために設けられた概念です。
3. なぜ軸の距離で制限が変わるのか?
「なんでこんな細かいルールがあるんだよ。嫌がらせか?」と愚痴りたくなる気持ちはよく分かります。
このルールの根拠は、道理や、橋の梁(はり)を守るためにあります。
トラックが橋を渡るとき、車軸の間隔が狭いと、橋の同じ「1箇所のパーツ」に強烈な重さが集中してしまいます。これが原因で、目に見えないひび割れが入ったり、最悪の場合は橋がたわんで崩落する危険性があるのです。
一方で、車軸の間隔が広ければ、重さが橋の違うパーツに分散されます。道路管理者としては、道路を長持ちさせるために、この「間隔と重さのバランス」をシビアにチェックせざるを得ないのです。
4. 隣接軸重が特車申請に与える大ダメージ
実務において、この隣接軸重を計算せずに「車検証の最大積載量」ギリギリまで荷物を積んで申請を出すと、ほぼ間違いなく手痛いしっぺ返しを食らいます。
どんなダメージがあるかというと、「通行条件が厳しくなる(D条件などの付加)」や「不許可」です。
「軸重10トンはクリアしてるから大丈夫!」と思って申請したのに、オンライン申請システムの画面に「隣接軸重が制限値を超えています」と非情なエラーメッセージが表示されたり、道路管理者から「このルートは通せません」と突き返されたりするのです。
その結果、
- 夜間しか走れない(夜間通行条件)
- 前後に誘導車を配置しなければならない(コスト激増)
- そもそも許可が出ないから、遠く離れた別の迂回路を探すハメになる
という、三重苦が会社を襲います。これはなんとしてでも避けたいですよね。
だから隣接軸重の基準は明確に知っておく必要があります。
5. 隣接軸重をクリアする2つの対策
では、この厄介な隣接軸重の壁を乗り越えるにはどうすればいいのか。現場で使える具体的な対策を2つ紹介します。
対策①:荷物の「積み方(積載位置)」を見直す
実は、同じ重さの荷物を積むにしても、荷台のどこに置くかで各車軸にかかる重さ(軸重)のバランスが変わります。 ほんの少し荷物の位置を前後にずらすだけで、隣接軸重が制限値内に収まり、嘘のようにスムーズに許可が下りることがあります。感覚ではなく、事前の計算(軸重計算)が勝負を分けます。
対策②:軸数の多い車両(台車)への変更を検討する
2軸の台車で制限を超えてしまうなら、あらかじめ3軸の台車を用意する、あるいは軸の間隔(軸距)が広いタイプの車両を導入するというのも手です。 初期投資や車両の手配の手間はかかりますが、毎回の特車申請で「誘導車つきの夜間走行」を強いられるコストを考えれば、長期的に見てどちらがトクかは火を見るより明らかです。
まとめ
隣接軸重は厄介な概念の一つです。私自身大雑把な性格なもので、「総重量さえクリアしてたら別にいいじゃん」と思わないでもないですが、総重量はクリアしても、隣接軸重が一般的制限値をオーバーすると、道路に与えるダメージは甚大なものになります。
極めて面倒ですが、道路は公共の財産ですので、やはりしっかり隣接軸重も押さえておかなければいけないポイントなのです。

